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「そうだ、知っているかい。猫の惨殺事件」
「えっ、なにそれ」
「なんだい、知らないのかい。情報が遅いねぇ。犯人が逮捕されたんだよ」
照は新聞を取り出してその記事を見せてきた。
熱湯をかけるだのガスバーナーで焼いただのという記事に憤りを感じた。よくそんな酷いことができるものだ。けど、犯人が逮捕されたのならもう猫が殺されることはないのだろうとホッとはした。それでも、胸の奥がなんとなくモヤモヤした気持ち悪さが広がっていた。せっかく美味しいものを食べているというのに。
ああ腹が立つ。何が『自分は正義だ。犯罪者ではない』だ。
新聞記事を読み進めて、『んっ』となる。『鬼猫』ってなんのことだろう。こいつ頭がおかしい奴なのか。少なくとも猫を殺そうと思うこと自体が普通じゃない。異常者だ。けど、精神鑑定とかして責任能力無しとか判定されて無罪になってしまうこともあるのかもしれない。
そうなったらこの憤りをいったい誰にぶつければいいのだろう。猫だって同じ命があるのに。
「幸吉さん、チーたちはしばらく外には出さないようにしたほうがいいかもしれないねぇ」
「そうだな。同じようなことをする奴が出てくるかもしれないからな」
「確かに」
大和は幸吉と照の会話に頷くと隣の部屋にいるチーたちに目を向けて、守ってやらなきゃと考えていた。
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