第一章 「鬼猫来る」

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 確か『愛莉も鬼だったのだろう』って。ご先祖様は鬼だったのだろうか。そんな祖父もまた鬼らしい。それに日本人のほとんどが鬼だって笑っていた。笑える話なのかわからないけど。鬼って何って思ってしまう。どう見ても祖父は人だ。角はない。本当は鬼って角がないのだろうか。まさかボケがはじまってしまったのだろうか。それはないか。  鬼猫の話を聞いて愛莉は祖父の話は本当かもしれないと思えるようになったのも事実だ。  人なのに鬼か。  そういえば、大黒様も力士も鬼だなんて話していた。あっ、力士はなにか違う呼び名だった。確か……そうだ土蜘蛛(つちぐも)だ。やっぱりよくわからない。どうみても力士は人の姿だ。大黒様も角はない。鬼猫は角っぽいものがあるけど。  いったい何の話をしているのだろう。自分でもわからなくなってくる。身分がどうとか話していたのは記憶にある。  ああ、やめた。このお馬鹿さんな頭ではオーバーヒートして脳が焼け焦げてしまう。なんでこんな話を思い出したのだろう。  鬼猫がいなくなったことと関係があるのだろうか。ふとそんな気がしてきた。  そんなことよりも鬼猫はどこ。本当にいなくなってしまったの。探さなくては。鬼猫の気を察知すればいい。自分にならできるはず。霊感はもちろん、第六感も働く。けど、何かが邪魔して気を掴めない。 「鬼猫さん、本当にいないの。どこに行っちゃったの」  刹那、一陣の風が吹き髪をかき乱していく。 「探すなよ、危険だからな」  今の声は鬼猫だ。声のほうへ振り返ったけど誰もいなかった。 「どこ、どこにいるの。鬼猫さん」  あたり一帯探し回ったけど、鬼猫はどこにもいなかった。 「鬼猫さん。愛莉、探しに行くからね。悪い人は捕まったから危なくないから」  きっと鬼猫が聞いているはずだと大声で叫んだ。
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