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「狐さん、僕をいじめた孝くんみつからないみたいだね。狐さんは居場所を知っているんでしょ。もしかして、もう死んじゃっているの」
徹はニヤリと笑みを浮かべて語り掛ける。狐からの返答がなくても語り続けた。
「あっ、そうだ。もう一人嫌な人がいるんだ。この間、家の外を見ていたら僕を見ていた人がいてね。なんだか嫌な感じがしたんだ。きっと僕のこと馬鹿にしているんだ。あいつにも罰を与えてよ。名前はわからないけど、狐さんならわかるよね。あいつ、幽霊を見るみたいな目で見ていたんだよ。僕は死んでいないのに、失礼な奴でしょ」
気に入らない奴らはみんな天罰が下る。そうじゃなきゃ。
自分を苦しめる奴はみんな敵だ。
「そうだ狐さん、鬼猫も悪い奴なのかな。なら、鬼猫も苦しめてやらなきゃね」
あと誰がいるだろう。いじめっ子はみんな罰を受けている。パパもママも勝手に家に入って来た悪いおじさんも罰を受けている。
「狐さんはすごいよね。僕の願い事全部聞いてくれるんだから。頼りにしているよ、狐さん。僕のことわかってくれるのは狐さんだけだもん」
薄暗い部屋の中に灯る二つの蝋燭の火が目に留まる。蝋燭の火ってなんでこんなにも落ち着くのだろう。
徹はユラユラと揺らめく蝋燭の火をじっとみつめて口角を上げた。
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