20人が本棚に入れています
本棚に追加
/157ページ
「誰、誰かいるの」
思わずそう口にしてしまってすぐに後悔した。
眩しい光がこっちに向いて視界を塞がれる。すぐに顔を背けたけど目がチカチカする。徹はすぐにリビングの入り口へと足を向けて電気のスイッチを押した。スイッチの場所は目を閉じていてもわかる。
明るくなったリビングには髪の毛がボサボサの知らないおじさんが立っていた。徹は心臓が凍る思いをして一歩後退りした。パパでもママでもない知らない人が家の中にいる。これって……。
「だ、誰だよ。ど、泥棒なのか」
声が震えてうまくしゃべれない。どうしよう。部屋にいればよかった。
「ふん、子供がいたのか。騒ぐんじゃないぞ。騒いだら殺すからな」
殺す。そ、そんな。死にたくない。あっ、そうだ。狐さんがいるじゃないか。だいじょうぶだ、きっと大丈夫だ。狐さんがいれば、そんなことできるわけがない。自分には心強い味方がいる。ほら、深呼吸をして落ち着くんだ。
悪い人は罰が当たる。目の前のおじさんにもきっと罰が当たる。
狐さんのことを考えていたら、少しだけ心に余裕が出てきた。
「おじさんは悪い人なんだね」
「うるさいぞ。死にたくないなら黙っていろ」
「悪い人なんだね。なら、きっとおじさん呪われるよ。むふふ」
「な、何を言っている。呪われる。なんだ、その顔は。おまえ、気持ち悪い奴だな」
徹はニヤリとして踵を返すと階段を駆け上がった。
「おい、待て」
徹は自分の部屋の扉をバタンと閉めて鍵をかけると隠し部屋の扉を開いた。
「狐さん、悪い人を懲らしめて。泥棒のおじさんを懲らしめて」
***
最初のコメントを投稿しよう!