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とんでもないことをさっきから話しているではないか。本当に素戔嗚尊が前世だとしたら自分とでは月とスッポンだ。そんなことどう考えてもありえない。素戔嗚尊だなんて。
「どうかしたか」
ああ、話しかけるな。
益々、眠れなくなってきた。一旦、頭の整理をするか。少しは落ち着けるかもしれない。
えっと、目の前に剣を掲げた大黒様がいて……。んっ、大国主って確か口にした。そうだとしたら、大黒様と大国主命が同一人物だってことなのか。それで、自分は素戔嗚尊の生まれ変わりってことだろう。
やっぱり信じられない。だが、目の前に間違いなく大黒様がいる。このことが真実だと告げているのではないか。そうなのか。確かに大黒様はいるけど嘘かもしれないじゃないか。
嘘ってなんだ。なにがどう嘘なんだ。ああ、ダメだ整理なんてつかない。
「疑り深い奴だな。ちなみに字を見れば大黒と大国の読みは同じになるであろう。まあ、どうでもいいことだが」
確かに、どっちも『だいこく』と読める。
「もうひとつ、教えてあげようではないか。我は鬼でもある。大黒とはおおいなるクロ、つまり鉄塊の持ち主の産鉄王となる。産鉄をする者たちの神として崇められていたが、産鉄をするような身分の低い者は鬼だと言われていた。鬼が崇める神もまた鬼ってことだ。まあ庶民の神として素戔嗚尊や牛頭天王もいたな。この素戔嗚尊と牛頭天王も同一人物だがな。みんな鬼だ」
ああ、もうパニックになりそうだ。何を話している。自分の頭では理解不能だ。それにしても大黒様って意外とおしゃべりだ。知らなかった。待てよ、こいつはそもそも本当に大黒様なのか。疑わしくなってきた。
「なんだ、まだ信じないのか。それならそれでもいい。まだまだいろいろ話したいことがあるからな。おまえが思い出すまで話してやろう。さてと、何を話そうか」
「もういい。頭がパンクしそうだから話は終わりだ。もう寝る」
大和は電気を消してベッドに横になり布団を頭まで被ってしまった。
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