第一章 「鬼猫来る」

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 大黒様はどうしているのか静かになった。寝たフリをしたところで騙されないとは思うが、気遣ってくれたのかもしれない。  本当に寝るとしよう。そう思ってもなかなか寝付けない。なんだか大黒様のことが気になってしまう。  大黒様も休んでいるのだろうか。それとも、どこかへ行ってしまったのだろうか。そんなことより大黒様はここへ何をしに来たのだろう。話をしに来たのか。いやいや、考えるのはよそう。今は寝たほうがいい。  大和はしばらくするとウトウトし始めた。  ガタガタガタ、ドタン。  んっ、なんだ。大黒様が暴れているのか。それともまた家鳴りか。せっかく眠れそうだったのに。  布団から顔を出して様子を窺う。薄暗い中、大黒様がいたあたりを見遣ったが姿が見えない。外にでも出て行ってしまったのだろうか。  ガタガタガタ、ドタン。  窓が突然激しく揺れて、心臓が縮む思いをした。恐る恐る窓のほうへ顔を向けると、カーテンが浮き上がり大和は思わず仰け反ってしまう。そのとき窓の外に睨みつけてくる凄みのある顔が突然現れて身体がゆっくりと後ろへ倒れていった。気づけばベッドの向こう側に落ちていた。  腰を思いっきり打ちつけて顔を歪める。いったい何が起きている。腰を擦りながら窓のほうへと目を向ける。なにごともなかったかのようにカーテンが閉められていた。  さっきのはなんだったのだろう。怨霊か。憤怒の表情をしていた。気づかないうちに何か悪いことでもしてしまっただろうか。怨まれているのか。大和は必死に考えを巡らせたがそんな覚えはなかった。 「もう行ってしまったぞ」  大黒様がベッドの上から声をかけてきた。
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