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「今のはなんだ。怨霊か」
「怨霊だな。いや、ただの怨霊じゃないかもしれぬ」
「どういうことだ」
「いまだに帝の命令を遂行している者だ。鬼退治しに来たってところだろうな。見覚えのある顔だったし、小声で『帝の命令は絶対だ』などと口走っていた。おそらく間違いないとは思うぞ」
なるほど。いやいや、なるほどじゃない。よくわからない。帝っていつの時代の話だ。天皇のことだろう。鬼退治って、そんなことがあるのか。桃太郎じゃあるまいし。鬼ってもしかして自分のことを言っているのか。それとも大黒様のことか。
「それで、誰なんだ」
「怨霊と化した天皇と言えば有名であろう。崇徳天皇だ。日本三大悪妖怪にされて快く思っていないのだろう。それも鬼や妖怪たちのせいだと思い込んでいるのかもしれない。誰かに何か吹き込まれたのかもしれない。だが、自ら動くことなく命令しておるようだ。我は鬼でも妖怪でもない。だから成敗してやると身勝手な言い分をほざいておる。今来たものはその下僕だな。そうそう、今回事件を起こして捕まった者も操られておるのだろう。あくまでも推測だが」
崇徳天皇。頭の片隅にそんな名前の記憶はある。けど、鬼退治の話とは時代が違うような気もするが、どうなのだろう。記憶違いだろうか。
んっ、今、捕まった者も操られているって言ったか。新聞記事のあいつのことだろうか。確か鬼猫がどうとかって……。
なんでそんなことになっている。
「なぜだろうね。たまたま同じ場所に集まってしまったってところだろうか。あちらの世界では時代はそれほど気にすることではないからな」
「そういうものなのか」
そう言いつつも正直よくわかっていない。あれ、しゃべっていないのに会話が成立している。大黒様は心を読めるのか。
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