第一章 「鬼猫来る」

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「実際には同じ場所にいたわけではないが、道が同じ場所に繋がってしまったというべきだろうか。あくまでも想像の域を出ないのだが」  道が同じ場所に繋がるってなんだ。益々、わからなくなってきた。 「そうそう力士も会っているであろう。当麻蹴速、知っておるだろう」  なんだ急に。確かに力士とは会ったけど、知らない。『たぎまのけはや』っていつの時代の力士だ。ああ、また頭の中がごちゃごちゃしてきた。まったく、話がみえない。自分の頭では理解不能だ。  ちょっと待て、まさかどさくさに紛れて相撲始祖の話を始めようってわけじゃないだろうな。さっきそんなこと口にしていた。 「悪いけど、やっぱり寝る。話についていけないから」 「しかたがない。仲間を忘れるとは残念だ」  仲間。いやいや、自分は鬼の仲間なんかではない。素戔嗚尊でもない。大黒様は思い込みが激しい勘違いな奴かもしれない。奴っていうのは失礼か。そんなことはどうだっていい。そうだ、もしかしたらこれは夢かもしれない。こんなことありえない。明日の朝になればきっと、やっぱり夢だったかとなるはずだ。よし、寝よう。  ああ、寝ようと思っている時点でこれが現実だと言っているようなものではないか。  知らない。何も見なかった。聞かなかった。そう思うことにして布団を再び被ってしまった。 ***
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