第一章 「鬼猫来る」

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「お祖父ちゃん、大変」 「どうした。なにがあった」  愛莉は鬼猫鎮神社の様子を祖父に伝えた。 「これってまずい状況よね」 「うむ、鎮石までもが割れているとなると……確かにまずい。愛莉が空に見た者は怨霊かもしれないな。これは逮捕された成瀬とかいう者も無関係ではないかもしれない」 「でしょ。だから愛莉、学校休んで探しに行くから」 「わかった。学校には連絡しておく。これは音場家の仕事だ。心してかかれよ」  愛莉は強く頷き準備を始めた。  鬼猫は『探すな』と伝えてきたけど、これは代々鬼猫鎮神社を守ってきた音場家の出番。今は自分がやるしかない。祖父には力はない。祖母も父も母も天に召されてしまった。力を受け継いだ自分しかいない。  代わりの鎮石をみつけて再び封印しなくてはいけない。あの怨霊は誰だかわからないけど昔の衣装を纏っていた。きっと、鬼猫は怨霊のあとを追ったに違いない。大黒様も力士もきっとそうだ。  ならば、自分もみんなに続かなきゃいけない。けど、うまくできるだろうか。いきなり実戦だとちょっと不安だ。愛莉は両手を見遣り力がコントロールできるか試してみた。掌がビリリとする。大丈夫かも。いや、力を使うのは危険だろうか。やったことがないし。いざとなれば幽霊に頼むこともできるはず。幽霊には幽霊で対抗すればいい。 「愛莉、これを持っていけ」  祖父が取り出して来たのは首から下げられるようにした翡翠の勾玉だった。
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