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まさか、これはあの子供が口にしていた『呪い』なのだろうか。
馬鹿馬鹿しい。そんなことがあってたまるか。そんなことは忘れてしまおう。
とにかく今のことを考えよう。金がなきゃ食いたいものも食えやしない。
どこか金持ちの家でもないだろうか。盗みに入って大金を手に入れてやる。それとも詐欺でもやるか。手っ取り早くスリがいいかも。けど、こんな田舎じゃ無理だ。人っ子一人いやしない。まだ夜の八時だっていうのに。やっぱり盗みに家に入ろうか。農家の立派な家だったら金目のものがあるだろう。
そう思っていたのだが、どうやら道に迷ったらしい。街灯もなくて暗くて何も見えやしない。目を凝らしてみても家らしきものも見当たらない。田舎なんかに来たのは間違いだった。いや、好きで来たわけじゃない。
こうなったのも詐欺仲間が捕まってしまったせいだ。なぜ、隠れ家がばれてしまったのだろう。危うく自分も捕まるところだった。とことんついていない。逃げに逃げて、こんな田舎に来てしまった。
ああ、もう。真っ暗でなにもわからないじゃないか。街灯くらいつけろ。
んっ、明かりが見える。
家か。地主の家だったらいいけど。
成瀬道也は明かりに向かってゆっくり歩みを進めた。
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