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「なんだ、街灯じゃないか」
くそったれ。確かに街灯があればとは思ったけど、肝心の家がみつからなきゃ意味がない。無性に腹が立つ。
羽虫の集団が街灯に向かって舞っているのも妙にいらつく。早いところ家をみつけなきゃ。今は盗みよりも今日の宿をみつけたほうがいいか。腹も減った。喉も乾いた。叫びたい気分だ。田舎の人はいい人が多いから簡単に騙せるだろう。困っていると言えば泊めてくれるはずだ。そうだ、そこで金目のものをこっそり盗んで朝になる前にとんずらだ。
それがいい。
成瀬はニヤリとして人っ子一人いない道を歩いていく。
おっと、危ない。
危なく転がっていた石を踏んで転びそうになってしまった。転ばずにはすんだが捻挫している足が痛んで顔を歪めた。
これって悪さばかりしてきたから、罰でも当たったってことだろうか。いや、やっぱり呪われたのかも。成瀬はすぐにかぶりを振った。馬鹿なことを考えるな。罰もなければ呪いなんてものもない。そう思いつつも本当にそうなのだろうかと思ってしまう。
溜め息を漏らして、ふらりとすぐ近くにあった石に寄りかかる。あれ、何か書いてある。
『←鬼猫鎮神社』とあった。
あっちに神社があるのか。ちょっと行ってみるか。もしかしたら人がいるかもしれない。神主の家でもあったらいいのだが。成瀬は矢印の示すほうへと足を向けた。それらしきものはなさそうだが、まだ先なのだろうか。
成瀬はあたりに目を向けると立札をみつけた。
神社はこの上にあるのか。
木々が生い茂る中階段らしきものがあった。暗いせいもあるが先がよく見えない。どこまで登ればいいのだろう。成瀬は他へ行こうかと考えたが選択肢はなさそうだった。見渡してみても周囲には民家は見当たらない。しかたがない。行くしかない。
待てよ。夜の神社っていかないほうがいいって聞いたことあるけど、どうしようか。先の見えない坂道を見上げていたら冷たい風が首筋を撫でていき思わず「うおっ」と叫んでしまった。
幽霊でも出そうな雰囲気だ。民家を探したほうがいいんじゃないか。そう思ったところで上に微かな明かりをみつけた。もしかしたら、家があるのかもしれない。もう一度あたりに目を向けて黙考する。
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