第0章 「はじまり」

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 そういえば『鬼猫鎮神社』って書いてあったけど、鬼猫ってなんだ。『鎮』の文字は気にかかる。怨霊とか封印されているのではないだろうか。そう思ったらブルッと身体が震えてしまった。  やっぱり、こんな時間に来る場所ではなかった。早いところここから離れたほうがいいかもしれない。夜の神社はどこか薄気味悪い。なぜ、来てしまったのだろう。やっぱりついていないのかもしれない。これは改心しろと神様が言っているのか。もう悪事はやめろと言っているか。そのせいでここに引き寄せられたってことも考えられる。  今更、悪事をやめることなんてできない。  ここは一刻も早く帰るべきだ。  成瀬は来た道を戻ろうと一歩踏み出したところで何かに足を取られて前のめりになり正面にある囲いの中へと倒れ込んでしまった。倒れ込んだとき、囲いにつけられていた注連縄(しめなわ)を引っ張り落として踏みつけてしまった。 「いてぇ。なんだって、こんなところに石があるんだ」  囲いの中の石に頭をぶつけてしまった。額に瘤ができている。額を押さえた手には少し血がついていた。成瀬は立ち上がり石を踏みつけて罵声を浴びせた。その瞬間、あたりの木々が騒めき出して身体に電流が走り抜けた。  いったい何が起きた。身体が痺れる。身体が、身体がいうことをきかない。もしかしてこの石を踏みつけたせいか。雷でも落ちてきたのか。いや、落雷はなかったはずだ。何の音もしなかった。
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