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愛莉は大和のアパートの近辺を散策していた。
うっかりスマホを置いてきてしまい引き返そうかと思ったが、誰も連絡をしてくる人はいないだろうとそのまま散策を続けた。誰かを呼ぼうかと思ったが大黒様も当麻蹴速も怨霊調査に忙しそうだったから声をかけなかった。だいたいの場所は教えてもらっていたから用事があればそこへ行けばいい。
そんなことよりもどうにも気にかかる場所があり散策をしている。
『確か、このへんだ』
大和と出会う前に一瞬だけ死臭を感じた。けど、どこからかはっきりしない。本当に死臭だったらずっと臭うはずなのに。何かが変だ。微弱だが妖気のようなものを肌に感じた。妖怪なのか怨霊なのか。気のせいではないはずだ。
手にした勾玉が微かに震えている。やっぱり間違いない。自分の直感が正しいことの証だ。
どこだろう。このへんで間違いないはず。
どこかの家に隠れているのかもしれない。それだと探すことは困難だ。一軒一軒、確認することはできない。この近所で不審者がいるなんて通報されても困る。
やっぱり鬼猫と一緒のときのほうがいいだろうか。
愛莉は一つ深呼吸をして集中しはじめた。第六感が近くだと告げている。
逃走犯が潜伏している恐れもある。気を引き締めて取り掛からなきゃ。
ダメだ、わからない。右の家からも左の家からも何も感じない。次の家も次の次の家も怨霊の「お」の字も感じない。気のせいだったのだろうか。
早とちりってことだろうか。そんなはずはないと思うが自信がなくなってくる。
んっ、感じた。突き刺さるような鋭い視線を感じる。
どこ、どこから。
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