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おかしい。確かに感じたのに今は何も感じない。絶対にいる。禍々しい気だった。それが一瞬で消え去るなんて余程力のある者なのだろう。みつけても太刀打ちできないかもしれない。けど、そんな凄い力の持ち主がいるだろうか。鎮石に封印された怨霊ってこともあるのだろうか。いや、さっき感じた気はどこか違う気がする。
ふと祟り神という言葉が浮かんだ。ありえる。
きっと、そうに違いない。いや、断言はできないか。どっちにしろ、鬼猫の力が必要だ。
あっ、甘い香りが……。
そう思った瞬間、睡魔が襲い掛かりガクンと膝から崩れ落ちてしまった。誰かの視線を感じたが愛莉には探ることはできなかった。眠い、眠くて堪らない。ダメだ、眠ってはいけない。お願いだから誰か力を貸して。
『喝!』
突然の声で身体がビクンとなり頭がスッキリとして睡魔がどこかへ消え去った。
危ない、危ない。誰かが意識を奪おうとしてきた。いったい誰なのだろう。愛莉は首から下げていた勾玉を取り出してギュッと握りしめた。声は勾玉からだった。
愛莉はすぐに立ち上がりあたりに気を配った。油断していた。ここまで強い力の持ち主がいるなんて。
ここから見える範囲にいるのは間違いない。今はなんの気配もない。感じないことが恐ろしい。
ここにいてはいけない。愛莉の心がそう告げている。
一人ではダメだ。鬼猫に知らせたほうがいい。大黒様と蹴速もいたほうがいいかもしれない。大和は足手纏いだからいなくていい。あっ、けど一人にするのは危険だ。力がないのに狙われているみたいだし。
まただ。確実に見られている。
どこだろう。
うぅっ……。胸が苦しい。
詮索はしてはいけない。いますぐ帰ろう。
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