第二章 「怨霊退治」

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 徹はじっとテレビの画面をみつめていた。  まっくらな部屋の中、煌々と光るテレビ画面だけが浮き上がっている。 「行方不明中の中原孝くんが無事保護されました」  生きていたのか。残念。  徹は体育座りをしてニュースキャスターの声に耳を傾けていた。どうやら孝は意味不明なことを話しているみたい。気が変になってしまったのかも。入院をしたのか。 「ふーん、化け物ね」  そんなこと話しているのか。  化け物に襲われたみたいだけど、化け物ってもしかしたら……。  徹は今閉じられている隠し部屋に目を向けた。 「やっぱり、狐さんが……。違うかな」  独り言を呟き、徐に立ち上がると本棚の一番下に不自然に置かれた狐の置物を押し込んで右に回した。  ガタガタと音を立てて本棚がスライドしていく。テレビからは『目玉を取られる』と叫んでいたとの話も聞こえてきた。目玉……。どういうことだろう。  窓もない真っ暗な部屋がそこにはあった。電気もその部屋にはない。徹は蝋燭に火をつけてゆっくりと部屋の中に入っていく。  少し行くと部屋の中なのに朱色の鳥居があってそこを潜ると朱色の社が見えてくる。不思議が空間だ。徹は蝋燭の火を社の両脇にある蝋燭に移すと持っていた蝋燭の火を消した。  どうしてこんな隠し部屋を前の家の人は作ったのだろう。ふと徹はそんなことを考えたがすぐに考えるのをやめた。  背後からはまだテレビの音声が聞こえてくる。 「最近、行方不明事件が増えていますね」  そんな声が耳に届く。  その行方不明者はみんな徹をいじめた子たちだった。『同じ学校の同じクラスの子供五人が行方不明になっていることもあり警察は同一犯だと捜査をしている』なんて声がテレビから聞こえてくる。たまに自分の部屋の窓から外を見遣ると警察官の姿をみかける。当然といえば当然だ。  みんな馬鹿だ。孝の話を信じればいいのに。  犯人が捕まるはずがない。だって犯人はきっとここの狐だ。呪いだ。
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