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「狐さん、孝くんがみつかったみたいだよ。なんだか気が変になっちゃったみたいだけど。もう孝くんは終わりだね。他のみんなも同じなのかな」
社の中から不気味な笑い声が響き渡る。
「狐さん、そういえばさっき女の子のこといじめたでしょ。なんでなの。あの子は邪魔者なの。まあいいや。それと、パパとママがずっと眠ったままなんだ。どうしてなの。僕は眠れないのに、ズルいよ」
またしても不気味な笑い声が響いてきた。
なぜか心の奥がズキリとした。そのとき、『本当にこれでよかったのか』と誰かに問い掛けられた気がして胸の奥が疼いた。
よかったのだろうか。パパとママに目を向けて、俯いた。なんだか身体がすごく重い。あれ、なんだろう。目の前の祭壇を見た瞬間震えがきた。
『本当にこれでよかったのか』
なんだよ。誰だよ。やめてよ。徹は震える身体を自分で抱きしめるようにして項垂れた。なんだが、胸の奥が痛い。おかしい、なんだかおかしい。
狐じゃない誰かが話しかけてくるたびに変な気分になっていく。なにかとんでもないことを仕出かした気分になってくる。
心の奥底になにか冷たいものを感じてハッとする。徹はもう一度パパとママへと目を向けた。ピクリとも動かない様子に怖気が全身を襲った。
『本当にこれでよかったのか』
まただ。やめて。そんなこと言わないで。
徹は耳を塞いでかぶりを振った。
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