第二章 「怨霊退治」

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 帰ってくるのがたいぶ遅くなってしまった。愛莉は大丈夫だろうか。  大和は鬼猫を連れてアパートへと向かった。ところどころに水溜りができている。いつ雨が降ったのだろう。雨が降った記憶はない。このへんだけ降ったのかもしれない。  時刻は夜の十時を回っている。遅いって怒られるかもしれない。そうだったときのために途中でたこ焼きを買ってきたけど、そんなんじゃ機嫌はよくならないかもしれない。ちょっと冷めてしまっているし逆効果だろうか。  まあ、そのときは素直に謝ろう。  あれ、電気がついていない。おかしい。まだ帰っていないのだろうか。そんなはずは……。まさか、何かあったのだろうか。  大和は階段を駆け上がり、玄関扉を開け放つ。 「うぉっ」  思わず身体を仰け反らせてしまった。  真っ暗な中で体育座りをする愛莉がジロリと睨みつけてきていた。怨霊がついに部屋に上がり込んで来たのかと錯覚してしまった。間違いなく愛莉だ。  大和はすぐに電気をつけて「どうしたんだよ。電気くらいつけろよな」と声をかけた。 「遅い、遅すぎるからいけないのよ。どれだけ心配したと思っているのよ」  なんだ、逆切れか。いや、遅くなったこっちが悪い。わかっている。んっ、そういえば心配と口にしなかったか。聞き間違いじゃない。心配してくれていたのかと思うと嬉しくなってしまう。 「ちょっと、黙っていないでなんとか言いなさいよ」 「ごめん」  大和はそれしか言えなかった。 「もう、連絡ぐらいしなさいよね」 「えっ、したよ」 「し、したの」  大和は頷き、愛莉の様子を窺うと何かを探しはじめた。
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