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「おまえか。封印を解いたのは」
封印。なんのことだ。
何気なく下に目を向けると石が二つに割れていた。これって、もしかしてかなりまずい状況じゃないのか。ちょっと待て、こんな簡単に石が割れるはずがない。もともとヒビでも入っていたのかもしれない。いやいや、それでも割れないだろう。どっちかと言えば自分の頭が割れちまう。やっぱり雷が落ちたのか。
うぅっ、身体が燃えるように熱い。
ああ、やめてくれ。これは天罰なのか。
目の前に真っ黒い影が浮き上がってきた。夜の闇ですらくっきりと浮かび上がる黒い影がゆらゆらと揺れていた。幻でも見ているのだろうか。
「おまえを余の僕にしてやろうではないか。ありがたく思えよ」
うぅっ……。
息ができない。苦しい。頭が割れそうだ。
「や、や、やめてくれ」
「遠慮などすることはない。おまえのその闇に染まった心、余がもっと黒く染めてやろう。おまえにぴったりの者を与えてやろうではないか」
首が締め付けられる。殺されるのだろうか。
成瀬は気が遠くなっていくのを感じながら目の前にいる黒い影に目が留まる。顔が薄っすらと見え隠れしていた。影の者は昔の人が着るような服を纏っている。
「帝の命は絶対である。鬼を征伐するのだ。おまえの悪しき心を解き放て」
わけのわからない言葉を耳にして成瀬は完全に意識を失ってしまった。
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