第二章 「怨霊退治」

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「源頼光ってそんなに強いのか」 「まあ、強いことは強いが大黒と蹴速が負けるとは思えない」 「ふぉおよ、あのふぉたりが」 「おい、しゃべるか食べるかどっちかにしろ」  鬼猫に指摘されて愛莉はたこ焼きを頬張りながらニヤリとした。 「全部、食べるなよ。僕も食べたかったんだからな」  たこ焼きはもうあと一個しか残っていなかった。冷めているとはいえ食べるのが早過ぎないか。 「じゃ、はい。あーんして」  愛莉が爪楊枝で刺したたこ焼きを口元へ近づけてきた。なんだかドキッとしてしまう。 「なに、食べないの。それなら愛莉が食べちゃうよ」 「待て」  大和は慌ててたこ焼きをパクリと食いついた。冷めていても美味しかった。 「小腹空いていたからよかった。そうだ、そういえばさっき成瀬がどうのってテレビからの声だと思うんだけど、隣から聞こえた気がしたのよね」  愛莉はそう呟きテレビをつけた。 「次のニュースです。逃走中の成瀬容疑者の目撃情報があり逮捕されました」  それ、自分のことだ。逮捕されたのか。なら一安心。 「安心ではない。怨霊は逮捕されないからな」  確かにそうだ。成瀬が逮捕されてもあまり意味はない。また別の者に取り憑く恐れがある。それに脱走する可能性もある。怨霊が手伝えば簡単に脱走できるのかもしれない。  だが様子が変だ。何かあったのかもしれない。ニュース番組のスタッフらしき人がキャスターに紙を手渡している。 「只今入りました情報によりますと、逮捕された成瀬が留置所で首つり自殺をした模様です」  そう告げた矢先になにやらキャスターとスタッフでやり取りがされていた。放送中なのにどうしたのだろう。
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