第二章 「怨霊退治」

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「何者だ」  鬼猫が毛を逆立てて窓の外を睨みつけていた。  ここは二階だ。どう考えても人ではない。怨霊か。けど何か違うような。たとえるならば鬼だ。けどなにかが違う気もする。  空を飛べる妖怪なのか。大和はそう思ったのだがすぐに違うことに気がついた。庭にある木の上に腰かけていた。大和は瞼を擦って首を捻った。木の大きさと鬼と思われる人の大きさがアンバランスに映る。木の枝が折れてしまいそうだ。あの鬼は相当な大男なのか。 「俺様に驚くとはおまえらもたいしたことないな」  何者かわからない男はそう口を開くと突然身体中に目が浮き上がって来てパチリと開いた。うわっ、気持ちが悪い。 「なるほど、あいつは百目鬼だ」 『ドウメキ』 「百の目を持つ鬼だ」  そんな奴が何の用だ。 「頼光が頼りないからな。俺様の出番が回ってきてしまった」  百目鬼は不敵な笑みを浮かべて部屋に入り込んで来た。嘘だろう。窓ガラスをすり抜けてきた。なんだこの圧迫感は。百目鬼の頭が天井についてしましそうだ。 「おまえは鬼でありながら、敵対するつもりか」 「さあな。あの方は蘇らせてくれた。恩がある。それだけだ」 「あの方とは誰のことだ」 「さあな」 「ちょっと、鬼猫さん。どういうこと。百目鬼は愛莉たちを殺しに来たってこと」  百目鬼はどこか見下しているような笑みを浮かべていた。 「おまえさんの出る幕ではないぞ」  突然の声とともに百目鬼が後ろへ倒れ込んで窓の外へ飛ばされていく。  大和は何が起きたのかわからず狼狽えてしまった。窓も壁も壊れないことが不思議で堪らない。実体がないってことか。
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