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百目鬼は息を荒げてその場に仰向けになっていた。
それにしても恵比寿様は力がある。凄い、凄過ぎる。あんな大物をいとも簡単に釣り上げてしまうのだから。なのに、あの笑顔。所謂、恵比須顔だ。なんだかずっと笑顔なことが妙に怖さを感じさせる。
「大黒、蹴速、大丈夫か」
「おお、蛭子か。助かった。油断してしまった。百目鬼は仲間だと思っていたのに」
「まあ、そうだろうな」
大和は恵比寿様と大黒様を見比べていた。なぜ、大黒様はあんなに小さい姿なのだろう。恵比寿様は普通の大きさなのに。
「大和、それはおまえの力が弱いためだ。大黒と大和は繋がりがあるゆえ、そうなのだ」
鬼猫が耳元でそう呟いた。またしても心を読まれてしまった。
そう思っていたら鬼猫が「大黒の剣だけは手に取るではないぞ。おまえは人として生きればいい」と付け加えた。どういう意味だろう。いつだったかもそんなこと話していた。
気づけば百目鬼は恵比寿様に釣り糸で雁字搦めにされていた。
「こら、解け。蛭子、こんな仕打ちをしていいと思っているのか」
「おまえが悪いのだろう。あっち側に寝返ったのだから」
「そ、それは」
鬼猫が窓から飛び出して百目鬼のもとへ近寄っていく。
「おい、百目鬼。誰に指図された。それを教えれば許してやってもいいぞ」
「ふん、知るか」
「そうか、蛭子。締め付けてしまえ」
「うぅ、うぉーーー。いてぇ、やめろ、やめろ。わかったから。話すから」
鬼猫が恵比寿様に手で合図をすると釣り糸が緩んだ。
「誰だ」
「狐だ、狐だよ。あいつが子供たちをくれたからな。一人だけ取り逃がしてしまったけどな」
「なるほど、ならば案内してくれるな。その狐のもとへ。おまえの罪はそのあとゆっくり償ってもらおう」
「わかったよ。鬼猫と争う気はもともとないさ」
なんだろう鬼猫の存在が凄く大きなものに感じる。見た目は普通の猫なのに。
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