第二章 「怨霊退治」

36/37
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/157ページ
 百目鬼は息を荒げてその場に仰向けになっていた。  それにしても恵比寿様は力がある。凄い、凄過ぎる。あんな大物をいとも簡単に釣り上げてしまうのだから。なのに、あの笑顔。所謂(いわゆる)、恵比須顔だ。なんだかずっと笑顔なことが妙に怖さを感じさせる。 「大黒、蹴速、大丈夫か」 「おお、蛭子か。助かった。油断してしまった。百目鬼は仲間だと思っていたのに」 「まあ、そうだろうな」  大和は恵比寿様と大黒様を見比べていた。なぜ、大黒様はあんなに小さい姿なのだろう。恵比寿様は普通の大きさなのに。 「大和、それはおまえの力が弱いためだ。大黒と大和は繋がりがあるゆえ、そうなのだ」  鬼猫が耳元でそう呟いた。またしても心を読まれてしまった。  そう思っていたら鬼猫が「大黒の剣だけは手に取るではないぞ。おまえは人として生きればいい」と付け加えた。どういう意味だろう。いつだったかもそんなこと話していた。  気づけば百目鬼は恵比寿様に釣り糸で雁字搦めにされていた。 「こら、解け。蛭子、こんな仕打ちをしていいと思っているのか」 「おまえが悪いのだろう。あっち側に寝返ったのだから」 「そ、それは」  鬼猫が窓から飛び出して百目鬼のもとへ近寄っていく。 「おい、百目鬼。誰に指図された。それを教えれば許してやってもいいぞ」 「ふん、知るか」 「そうか、蛭子。締め付けてしまえ」 「うぅ、うぉーーー。いてぇ、やめろ、やめろ。わかったから。話すから」  鬼猫が恵比寿様に手で合図をすると釣り糸が緩んだ。 「誰だ」 「狐だ、狐だよ。あいつが子供たちをくれたからな。一人だけ取り逃がしてしまったけどな」 「なるほど、ならば案内してくれるな。その狐のもとへ。おまえの罪はそのあとゆっくり償ってもらおう」 「わかったよ。鬼猫と争う気はもともとないさ」  なんだろう鬼猫の存在が凄く大きなものに感じる。見た目は普通の猫なのに。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!