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「忌々しい鬼猫だ。この間の小娘も気に入らない。頼光、いるか」
「はい、ここに」
「鬼猫を即刻退治してまいれ。よいな」
「御意」
源頼光は煙の如く消え去った。
徹は朦朧としながらもそんな様子を目にしていた。今更ながら徹は間違っていたことに気がついた。とんでもない願いをしていた。自分のしてきた行いに震えがきた。隣で瞼を閉じて動かないパパとママの姿に涙が零れ落ちる。もしかして死んでしまったのだろうか。
「ふん、おまえはまだ生かしておく。そこで今は寝ていろ」
「き、狐さん……。も、もうやめて」
「黙れ、静かにしろ。すべてはおまえが望んだことだろう。今更何を言う」
「だって。僕は」
「黙っていろと言っただろう」
赤い血のような色の瞳で睨む狐に徹は口を閉ざした。どうして、こんなことになってしまったのだろう。全部、自分が悪いのだろうか。きっと、そうだ。悪いのは自分だ。どうしてこんな隠し部屋をみつけてしまったのだろう。こんな家に引っ越して来さえしなければ。
パパ、ママ。目を開けて。
「百目鬼の奴、思ったよりも役に立たなかったな。いや、最初からあいつは信用ならぬ奴だった。こうなったら、妖怪共をもっとこっちの世界に呼び込んでやろうか。ここには近づかせてなるものか」
妖怪。本当にそんなのいるのだろうか。
もしかして、目の前の狐も妖怪だったのだろうか。稲荷神社の狐じゃなかったのだろうか。この社はならなんなのだろう。
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