第三章 「狐の涙」

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忌々(いまいま)しい鬼猫だ。この間の小娘も気に入らない。頼光、いるか」 「はい、ここに」 「鬼猫を即刻退治してまいれ。よいな」 「御意」  源頼光は煙の如く消え去った。  徹は朦朧としながらもそんな様子を目にしていた。今更ながら徹は間違っていたことに気がついた。とんでもない願いをしていた。自分のしてきた行いに震えがきた。隣で瞼を閉じて動かないパパとママの姿に涙が零れ落ちる。もしかして死んでしまったのだろうか。 「ふん、おまえはまだ生かしておく。そこで今は寝ていろ」 「き、狐さん……。も、もうやめて」 「黙れ、静かにしろ。すべてはおまえが望んだことだろう。今更何を言う」 「だって。僕は」 「黙っていろと言っただろう」  赤い血のような色の瞳で睨む狐に徹は口を閉ざした。どうして、こんなことになってしまったのだろう。全部、自分が悪いのだろうか。きっと、そうだ。悪いのは自分だ。どうしてこんな隠し部屋をみつけてしまったのだろう。こんな家に引っ越して来さえしなければ。  パパ、ママ。目を開けて。 「百目鬼の奴、思ったよりも役に立たなかったな。いや、最初からあいつは信用ならぬ奴だった。こうなったら、妖怪共をもっとこっちの世界に呼び込んでやろうか。ここには近づかせてなるものか」  妖怪。本当にそんなのいるのだろうか。  もしかして、目の前の狐も妖怪だったのだろうか。稲荷神社の狐じゃなかったのだろうか。この社はならなんなのだろう。
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