第三章 「狐の涙」

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「愛莉と大和はここに残れ」 「なんでよ。鬼猫さん、愛莉は音場の人間よ。そこの大和とは違う。勾玉も持っているし、きっと役に立つわ」 「いや、二人は我らの世界とはなるべく関わらないほうがいい。巻き込みたくはない」 「もう鬼猫さん、水臭いな」 「んっ、何、水臭い。そうか、海に行っていたからかのぉ。それとも龍が近くにいるのかのぉ」  愛莉の言葉に反応した恵比寿様が自分の匂いを嗅いでいる。 「蛭子、そっちの水臭いではない」 「なに、大黒。違うのか」 「親しい間柄なのによそよそしいって意味のほうだ」 「ああ、なるほど」  恵比寿様はいつもの笑顔で頭を掻いていた。 「もう、そこの二人調子狂うからやめてよね。大和も笑っていないで鬼猫さんにきちんとお願いしてよ」  愛莉の怒りが飛び火した。正直、関わるなと言われればそうしたいのだが愛莉が許してくれなさそうだ。 「あの」 「ダメだ」  まだ何も言っていないのに。鬼猫に間髪入れずに言葉を遮られて、その上、愛莉には睨まれてしまった。鬼猫よりも愛莉のほうが怖い。そんなこと口が裂けても言えないけど。
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