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女が目を醒ますと、そこは死後の世界だった。
「あぁ、私はなんて不幸なのかしら」
女は己の運命に嘆きこうべを垂れた。
その女の人生は女の言葉通り不幸なものだった。
貧乏な家に産まれたわけではない。
ただ容姿が悪かったのだ。
鼻は低く、腫れぼったい目は開いているか開いていないほどに小さい。顎は出ており、異様にエラが張っていた。
お世辞でも美人とは言えないその容姿のおかげで、損をしない日はなかった。異性からモテないのはもちろんのこと同性からも煙たがられた。合コンに呼ばれたことはなく、男に告白でもしようものなら罵られた。
女は自分の容姿が憎くて仕方なかった。親を恨んだ。なぜこんな醜い姿に産んだのだと責め立てたことすらあった。かと言って親はどうすることもできず、ただ謝るだけだった。
大学卒業後も人前に出る必要のない電話対応の仕事に就いた。電話の内容はほとんどがクレームで激怒した相手の心無い言葉を受ける仕事は辛かった。それでも自分の容姿を非難されるよりはずっとマシだと女は耐えた。さらに、休日は外に出ることを控えて部屋にこもっていた。贅沢な生活はせず、貯金をした。女には美しい姿になりたいという願いがあった。
その夢が二十五歳の頃に叶った。貯めたお金で整形手術を受けたのだ。手術は大成功。女はようやく美しさを手に入れたのだ。
だが、不運が女を襲った。退院してまもなく女は交通事故に遭い呆気なく死んだのだ。
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