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 灰色の荒野が広がる死後の世界。側を流れる川面に映る美しい姿を見て女は嘆く。 「あぁ、折角美しい姿になったというのに死んでしまうなんて、誰も私を救ってはくれないのね」  死後の世界で女は泣き喚いた。するとその声を聴きつけた仙女がやってきて問いただした。 「お主、何故泣いておられる。我は仙女、千三百年前に死してこんにちまで此処に居るが、お主ほど酷く泣く人間も珍しく哀れな事よ」  女は鼻をすすると、仏のような顔をした仙女に全てを話した。 「あぁ、仙女様どうか聞いてください。私は生まれつき醜い姿であったせいで損な人生を歩んできました。周りからは嫌われ誰も味方してくれなかった。挙句に事故で死んでしまった。良い事はたったの一つもなかった。今は自らの不運さを憎む体さえもない」  絶えず涙を流す女に、仙女は柔らかな口調で呟いた。 「なんとも哀れな。我はお主を生き返らせる事はできぬ。過去に遡る事は仙女であれど叶わぬのだ。但し、未来を変える事はできる。お主の願いを一つだけ申せ」 「では、仙女様。私は、美人に生まれ変わりたい。人からちやほやされるような人生を送りたいのです」 「良かろう」  仙女がそう答えると同時に、女の周りは淡い光に包まれた。遠のいていく意識の中、女は生まれ変わった未来の事を考えていた。薔薇色の新しい人生が約束された未来を信じて疑わなかった。  だが、女は生まれ変わっても、周りが羨むような容姿にはなれなかった。確かに仙女は女を美人に生まれ変わらせた。細くて切れ長の目、太くて短い眉毛におちょぼ口、そして下ぶくれした顔。のっぺりとした顔こそが、仙女が生きていた時代での美人像だったのだ。無論仙女が悪いわけではない。ただ、女が不運だったのである。仙人に取り返しのつかないお願いをしてしまった。つくづく不幸な女である。
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