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――という出来事があった次の日、再会は突然訪れた。
「こうなったらお前を対価にする」
「いやそれ対価じゃなくて人質ってえぇぇ!?」
幻橋庵に続く坂道を登って下校中の私の前に、あのお客さんが再び現れた。
髪も着物も乾いたようだけれど、伸ばしっぱなしの髪と裸足は相変わらず。
彼女は出会い頭に誘拐宣言をすると、私を肩に担ぎ上げて走り出した。
突然の展開に、私は落っことされないようにしがみ付くので精一杯。その間にも彼女は草をかき分け転がる石を飛び越え、林の間を駆け抜けていく。
やっぱりこの人、人間じゃなくてアヤカシなんだ。人を担いでこんなに素早く走れる人間の女の人なんて、あり得ない。
そして混乱したまま、私は成す術もなく誘拐されてしまったのだった。
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