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いつから世界はこんなに暗闇に包まれたのだろう。
何もかもが新鮮だったあの頃はどこに行ったのだろう。
純真無垢なあたしは、暗闇に紛れていずれ消滅してしまうのだろうか。
それなら一層のこと、すべてを手放せたらいいのに。
あなたの後姿を見るのが最後だとわかっていたら、あたしはあなたを抱きしめて、口づけをしただろう。
あなたのその優しくて憂いを満ちた声を聞くのが最後だとわかっていたら、あたしは動画に撮って、何度だって繰り返し見ただろう。
あなたが「愛している」と囁くのに抵抗や羞恥を抱いているのなら、何度だってあたしがあなたのその耳にささやいていただろう。
どんなにあなたのことを想っているのか、どれほどあなたを愛しているのか。
それすらもできないあたしは、左手の薬指に光る幸せの象徴をゆっくりと見据える。
「遥音、結婚おめでとう」
「―――ありがとう」
今度こそ間違えたりはしない。
明日とは、誰にも約束されていないということを。
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