婚前の恋人たち

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婚前の恋人たち

目の前のパソコンは、あたしが入社した時から変わらない姿をしている。 創立何十周年かは知らないが、そんなことにキャンペーンやら商品を安く提供する余裕があるのなら、社員のパソコンぐらい最先端のものに変えてほしい。 などと心の中で愚痴りながら、目の前の画面を見据える。 胸を張って背筋を伸ばしていたのは、もう遠い過去のことである。 26のときにあまりの腰痛で購入したドーナツ型のクッションを武器に、猫背姿で今日もキーボードと戦う。 中小企業というよりは大きくて、大手としては小さい総合商社に就職したのはもう5年も前のことになる。 職場に慣れたころにやってくるのは、会社に対する不満と不信。 いつからこの口はマイナスの言葉ばかり吐くようになったのだろう。 昔はもっと純粋で馬鹿みたいに笑ってばかりだったのに、最近では眉間にしわを寄せることが多くなった気がする。 あたしはこんなにも卑屈で性格が悪かったのだろうか。 後輩を叱った時すら余計な一言を言っているようで後味が悪い。 笑顔のないアラサー女子の末路は、世間でいうお局さんなのかもしれないと、最近ではよく思う。 「遥音、お疲れ」 そんな口も曲がったあたしに、一緒にいてくれる人がよくいるものだ。 出会ってもう数年経つ鷲宮泰西は、ビール片手ににこにこと笑いながら、あたしの部屋にある青色のイスに座った。
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