最悪な救世主

2/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 これは、友人の知り合いから聞いた話です。  黒耶蘇(くろやそ)さんと言う化け物が居るそうです。  名前の由来は、耶蘇、つまり、キリスト教らしいのです。  なぜ、そう呼ばれるのかと言うと、人を助けるからなのですが、とても怖い存在なんだそうです。  友人の知り合いのA氏は、アパートのベランダから外を眺めていました。彼はトラックの運転手をしているのですが、その日は休日でした。  その日の天気は曇天で、気が滅入るような鉛色です。  さて、憂鬱な気分で外を眺めていると、左側から視線を感じたそうです。何気なく左へ向くと、彼は後悔しました。  不気味な者がじっと見つめています。  A氏の心臓が高鳴り、冷や汗が出ます。喉がカラカラで気分が悪くなります。  それは、不気味な者が放つ強烈な圧力による極度の緊張状態なのでしょう。客観的には分析できます。ですが、当事者の気持ち悪さは計り知れない物があります。  不気味な者は、喪服を着た女性でした。首から黒い十字架を下げ、右手を上げています。彼女が人差し指で示すのは、A氏の顔でした。距離があるにも関わらず、突き刺さる迫力を感じます。その姿勢のまま、人形の様に微動だにしません。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!