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再開
晴彦を待つ間、徒歩で行ける範囲で店を探した。
歩いて15分ほどのところに深夜営業もやっているカフェがあり、
夜限定で酒も出すらしい。
俺はモヒート、晴彦はブレンドコーヒーを注文した。
「静かなカフェ、だ。落ち着く」
「だな。近くに開いてる店あってよかった」
店内をきょろきょろと見回し、「へぇ…」とよくわからない感想を漏らしている。
俺もつられて、意味もなく視線だけで見回す。
木を基調とした店内で、天井からぶら下がっている照明や店の隅に手入れが行き届いた観葉植物が静かに存在している。
カウンター席もあり、カウンターには常連らしき人がマスターと小さく会話をしていた。
「…で、おまえ大学はどこなんだ」
「K大だよ」
「なんだ。俺の通ってるところからそんなに遠くない。勉強したいことがそこにあったってかんじなのか」
「う、ん。まぁ、そんなとこ。経済学部で、そこの教授が時々大学内で講演をやっていて、一般にも開放してるんだ。大学決める材料として、3年の春、だったかな、そのくらいの時にたまたま聞きに行って。そこで、決めたんだ」
「そうだったのか、」
知らなかった。春なら、まだ晴彦と普通に会話していた頃だ。
もっとも、3年はエスカレーター組と受験組とに別れるから両者とも受験の話はタブー視して、あまり話題に上げないようにする雰囲気があった。
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