名前は付けられないけれど、

なつの日

「おい、柳田。お前、何飲む？ビールか」
考え込みすぎて、周りの音が消えていた。
「先輩、俺まだ未成年っすよ」
「おまえ、顔に似合わず真面目だな」
「ご覧のとおり、くそ真面目なんで」
「柳田って、面白い奴だ」
「意味わかんないすよ。……じゃあ、ビールと焼き鳥で」
「なんだ、やっぱ飲むんじゃないか」

　数週間前に晴れて大学に進学した俺は、
社会見学として新入生歓迎の飲み会に参加してみた。

まぁ、一度くらいは経験してみるのもいいかもしれない。そんなノリ。
想像通りひたすら騒いでゲームを始める島もあれば、
少ない言葉を適当にかわす島もある。
運よく、適当に言葉を交わす島で助かった。

　色あせた薄い座布団の上で行儀悪くあぐらをかき、
ゆっくりと後ろの壁にもたれようとするが、固定されていない衝立だったようで
慌てて姿勢を正す。