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卒業後も変わらず友達でいるはずと決め込んでいたが、そんな未来は来ていない。
告白されたあの夏以来、晴彦と会っていないし、身長は近くても成績は天と地の差があったから、エスカレーターでラクして大学行く俺と違って、
おそらく頭のいい東京の大学へ進学したに違いない。
言っておくけど、これは未練ではない。
そんな女々しい表現は違和感で、
単にしっかり挨拶することなく自然消滅したのが心残りなだけだ。
「俺たちの友情はそんなもんだったのかよ」
……なんて、最高にダサイ台詞を吐き出したい気分だ。
焼き鳥はまだかと、何気なく厨房のほうへと顔を向け、
その流れでテーブル席を埋めている他大学の方へと視線を向けた。
見覚えのある後ろ姿が目に留まった。
「お、おしま……」
思わず口から漏れた。
柄にもなくもやもやと考えていたせいで具現化したのではと錯覚するほど、
タイミングが良すぎる。
あれはおそらく、まぎれもなく、十中八九、大島晴彦だ。
見慣れた丸みのある頭部に細い黒い髪。紺のラフなジャケットを着ていた。
友だちらしき横の男と会話した瞬間、横顔がちらと見えた。
……やっぱり、晴彦だ。
俺は静かに混乱し、心の中で「気づけ」と念じてしばらくにらんだ。
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