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次に隆史は、40代独身男性の正弘に声を掛けた。
正弘は各風呂に温泉を引いているパイプの点検を行ってるところだった。
そして、好美にしたように、正弘の考えていることを聞きだそうとした。
「これから変えていきたいこと…ですか?」
正弘は明らかに困惑していた。
「そうですね…正直、特にないですね」
正弘はそっけなく答えた。
「近々、温泉リゾート施設が建設されますけど、ウチとは全く違った温泉だし、第一規模が違い過ぎる。
あちらさんには伝統ってものがないし、目新しさで初めは客が入るだろうけど、そのうちみんな飽きちゃうんじゃないですかね。
それに比べると、ウチはウチのやり方を変えずに、地元の方々を大切にしながら、こつこつと進む…それがウチに向いていると思いますけど」
正弘は隆史の目を見ながら、真面目に答えた。
「なるほど。ありがとう、正弘さん」
隆史はそう答えると、ひとまず自分の部屋へと戻った。
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