進むべき道

12/14
前へ
/112ページ
次へ
 最後に、隆史は源治に声をかけた。  源治には自分の部屋に来てもらい、今まで皆から聞いた情報を伝えた。 「源治さん、  これからの夢湯治についてみんなに意見を聞いてみたんです。  女性客を重要視したり、ポイントカードを作ってみたり、ネットを使ってもっとアピールしたり…  一方で、変わらずこのまま昔からのお客さんを大切にして、伝統を重んじた方がいいって意見もあって。  確かに昔から贔屓にしてくれるお客さんはたくさんいるんだけど、だいぶお年を召されてて…十数年後にはお客さんは減っちゃうようなんです。  特にみんなが心配していたのは、近々建設される温泉リゾート施設。  あれにお客さんをみんな取られてしまうんじゃないかって…  口に出さないまでも心の奥では、それを感じてるみたいで…。  この夢湯治の歴史を一番知ってる源治さんは  何か思うところはありますか?」  隆史は源治の目を見て言った。  源治は床に敷かれたカーペットの上に正座して座っており、腕組みをして話を聞いていた。  そして、目を閉じて、静かに言った。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加