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最後に、隆史は源治に声をかけた。
源治には自分の部屋に来てもらい、今まで皆から聞いた情報を伝えた。
「源治さん、
これからの夢湯治についてみんなに意見を聞いてみたんです。
女性客を重要視したり、ポイントカードを作ってみたり、ネットを使ってもっとアピールしたり…
一方で、変わらずこのまま昔からのお客さんを大切にして、伝統を重んじた方がいいって意見もあって。
確かに昔から贔屓にしてくれるお客さんはたくさんいるんだけど、だいぶお年を召されてて…十数年後にはお客さんは減っちゃうようなんです。
特にみんなが心配していたのは、近々建設される温泉リゾート施設。
あれにお客さんをみんな取られてしまうんじゃないかって…
口に出さないまでも心の奥では、それを感じてるみたいで…。
この夢湯治の歴史を一番知ってる源治さんは
何か思うところはありますか?」
隆史は源治の目を見て言った。
源治は床に敷かれたカーペットの上に正座して座っており、腕組みをして話を聞いていた。
そして、目を閉じて、静かに言った。
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