オープン

5/6
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/112ページ
 この夏休み、隆史は夢湯治の仕事を手伝うばかりではなく、いろいろな温泉に入った。  近くにある温泉はもちろん、少し離れた温泉施設にも足を伸ばした。  大型の温泉施設には、何十台も止められる駐車場が完備されており、自動ドアをくぐると華やかなエントランスの奥に受付があった。  料金を支払い、脱衣所に入る。  いくつものロッカーが完備されており、たくさんの客で賑わっていた。  ロッカーに服をしまい、100円を投入して鍵をかける。  風呂場の扉を開けると、左手前にサウナ、その横に水風呂、そして奥には広い大浴場。  反対側にはジャグジーや電気風呂、その奥にはもう1つ扉があり、そこを出ると露天風呂。  そこには客を飽きさせない、様々な工夫が施されていた。  隆史は施設内にあるすべての風呂に入った。  どれも気持ちよく、至福の時を過ごせたものの、何となく慌ただしかった。  周りの客が多いこと、子供らが泳いだりして、一時として湯が落ち着いていなかったこと、洗い場では隣が気になり、ゆっくりできなかったこと…。  隆史はこの経験で、また温泉について考え方を学んだ気がした。    温泉を出て、エントランスの広場でくつろいだ。  売店の品は充実しており、タオルやアメニティだけでなく、お菓子や飲み物、お酒も置いてある。  自動販売機が立ち並び、飲み物だけでなく、アイスクリームも売ってある。  マッサージチェアも置いてあり、数人の客が入れ替わり立ち代わり、温泉で温まった身体をほぐしていた。  夢湯治とは全く違った世界がそこにあった。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!