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「これはうまくいくか…全然自信がないんだけど…」
隆史はうつむきながら呟き、切り出した。
「昔ながらの風呂を体験できるようにできないかなって…。
いわゆる『五右衛門風呂』」
「ごえもんぶろ…」
「そう。
今や五右衛門風呂はこの町にはないと思うんです。
それを敢えて復活させたいんです。
僕自身、五右衛門風呂というものに入ったことがない。
たぶん、拓海さんや成実さんもないんじゃないかな?
うけるかどうか分からないけど…
でも、ウチは温泉屋だから、そういった伝統的な風呂があってもいいかなって。
五右衛門風呂を知らない世代も多いだろうし、若い頃に入っていた方たちも、きっと懐かしいんじゃないかって…」
そう言って、隆史はみんなの顔色を窺った。
みんなの表情は曇っていた。ただ1人を除いて。
源治だけが、1人にこにこ笑っていた。
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