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「地元の方々に、これからもいいお湯といい一日の終わりを届けていく。
これはこの温泉館『夢湯治』の使命と思って、割り切ってもらいたい。
分かってくれるか?」
この話をする時、祖父は決まって優しい顔になる。
この表情を見ると、無下に断ることはできなかった。
「分かっています。
これから1つ1つのことをしっかりと身につけて、これからも、この地区に住まわれる方々に、『夢湯治』のお湯を、伝統を伝えていきたいと思います」
隆史がそう告げると、祖父は安心して隆史を解放してくれるのだった。
祖父も大事な跡取り息子を突然亡くして無念なのだろう。
そして不安なのだろう。
きっと、父清隆も同じ気持ちだっただろう。
そして、それは隆史も同じだった。
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