源 治

4/9
前へ
/112ページ
次へ
「お二人には申し訳ないのですが…  既に本人には伝えてあります。  ご本人から強い希望がありました。  今は隠すよりも、本人に告知するのが主流でしてね…」  医師は申し訳なさそうに、そう言った。 「先生…  源治さんの余命って、あとどれくらい…?」 智美は恐る恐る聞いた。 担当医師は一旦目を閉じて、その顔の前に手を組んで、 「6ヶ月…くらいかと…」 智美と隆史を交互に見ながら、そう言った。 6ヶ月… その言葉はあまりに無情に感じた。 しかしそれが医師の正直な見込みなのだろう。 そして、その事実を本人は知っている… その上で、まだ夢湯治へ戻る気でいるのか。  隆史の思考は完全に膠着した。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加