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半 生①
「今年の夏は特別暑かったですからね。
夏の疲れが溜まったのでしょう。
なに、すぐ元気になります」
病院のベッドに横たわったまま、源治は言った。
心配して駆け付けた隆史と智美は話を聞きながら思った。
『痩せた…』
源治が重病にかかっていたのは分かっていたし、忘れたことなどなかったが、あまりに元気に働いていたから、心配は日に日に薄らいでいた。
痩せてきたのはこの猛暑のせいとも思ったが、改めてこう対面すると、如実に痩せていた。
病室を後にして、隆史は智美に言った。
「母さん…源治さんにはもう無理はさせられない…」
「…そうね」
智美は涙ぐんでいた。
もう復活はないかもしれない…
隆史は直感でそう思った。
夏の日差しは容赦なく、二人に照りつけていた。
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