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源治が抜けた夢湯治は、まさに火の車だった。
隆史は朝5時に起床し、敷地内を掃除して、一通りの道具が揃っているかを確認する。
その後、開店に向け受付の整備をし、出勤してくる従業員を出迎える。
従業員たちも事情を理解して、早めに出勤してくれるが、それでも準備が終わるのは、開店10~15分前。
開店する頃にはかなりの疲労を感じる者もいたが、それをおくびにも出さず、みな笑顔で業務に当たっていた。
常連客はいつもの源治がいなくなったことに気づくと、それとなく心配し、少々の不備には目をつぶってくれてはいるが、これはあくまでも同情によるもの。
隆史はいつ客からのクレームがこないかを、いつもびくびくしていた。
幸い皆の頑張りのおかげで、今のところクレームなく、夢湯治は営業していた。
「お客さんに、最高の一日の終わりを届ける…」
その言葉を胸に皆一丸となって、働く日々が続いた。
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