半 生②

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 休日のある日、源治はいつものように、神社へと続く階段を上っていた。  すでに通いなれた参道。軽い足取りで階段を駆け上がる。  決して整備された階段ではなく、岩を敷き詰めた階段。  土がむき出し、あらゆるところに凹凸に足が絡まりそうになるが、何度も通いなれた道。  もう躓くことはない。  ものの数分で本堂に辿りつく。  町を見下ろすも、今日は朝もやに包まれた町。真っ白な雲海が町全体を包んでいた。  気温はやや低めだが、階段を駆け上がり温もった身体と目の前の雲海の壮絶さで、肌寒さは感じなかった。  源治は着ていた上着を1枚脱いで、一息。白い吐息が宙に舞い、すぐに消えてなくなった。  朝、ここに来たのは初めてだった。 「あら、めずらしい」  源治の後方で声がした。  振り返ると1人の女性がそこに立っていた。  源治は一礼して、立ちすくんだ。  まさか人がいるとは思っていなかった。
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