24人が本棚に入れています
本棚に追加
「今日はどうかと思って来たけど、来てよかった。
こんな雲海は久しぶり」
そうか…。とても珍しい光景なんだ。
源治は初めて朝にここへ来たので知らなかった。
朝はこんなにもすごい景色があったとは。
「よくここに来られるんですか?」
うっとりと雲海を眺めていると、となりで女性が言った。
突然かけられた言葉に、一瞬びくっとなったが、すぐに平静を取り戻して答えた。
「はい。
休みの日とか、時間があったら…ですね。
でも、朝来たのは初めてで…こんな凄い景色が見られるとは思いませんでした」
源治は正直に答えた。
女性はまた笑みを浮かべながら、頷いた。
「ここは雲海が見られる穴場なんですよ。
ただし湿度が高くて、ある程度気温が低くないとダメなんですけどね」
そういうと「では、私はこれで」と言い残し、彼女はその場を後にした。
源治はその後姿に一礼して、しばらくその景色を堪能した後、自分の借家へと戻っていた。
最初のコメントを投稿しよう!