24人が本棚に入れています
本棚に追加
/112ページ
「いいんですか…源治さん」
「何が?」
源治はすっかり冷めたお茶を飲み干して言った。
「だって今の話…
ほとんど源治さんの話だもの。
先々代に新しい提案を挙げていたのも、
温泉組合を立ち上げたのも、
全部、源治さんじゃないですか。
それを全て、先々代がしたように言っちゃったけど…」
「いいんですよ。
その方が坊ちゃんには響く」
源治はにこりと笑った。
「…で、いつ本当のことを言うんですか?
坊ちゃんも、いつまでも坊ちゃんじゃない…
もう立派な大人なんですよ」
「…いつかは分かること。
それまでは、黙っておいてください」
源治はそういうと、静かに立ち上がり、部屋を後にした。
残された好美は、もう1つ饅頭に手を伸ばし、ぱくりと口に入れた。
最初のコメントを投稿しよう!