新しい道

10/10
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/112ページ
「いいんですか…源治さん」 「何が?」  源治はすっかり冷めたお茶を飲み干して言った。 「だって今の話…  ほとんど源治さんの話だもの。  先々代に新しい提案を挙げていたのも、  温泉組合を立ち上げたのも、  全部、源治さんじゃないですか。  それを全て、先々代がしたように言っちゃったけど…」 「いいんですよ。  その方が坊ちゃんには響く」  源治はにこりと笑った。 「…で、いつ本当のことを言うんですか?  坊ちゃんも、いつまでも坊ちゃんじゃない…  もう立派な大人なんですよ」 「…いつかは分かること。  それまでは、黙っておいてください」  源治はそういうと、静かに立ち上がり、部屋を後にした。  残された好美は、もう1つ饅頭に手を伸ばし、ぱくりと口に入れた。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!