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大人たちはお酒の飲んで、わいわい騒いでいた。
「ねぇ、私から1つ提案があるんだけど」
美香が突然切り出した。
美香もしたたかに酔っており、いつもの美香と違って目がとろりとしていた。
妖艶な雰囲気があり、隆史は何となくどきどきした。
「坊ちゃんも、冬休みが終わると、あまり学校へ行かなくてよくなるんでしょ?」
事実、就職組の隆史は他の大学を受験する学生と違い、ほぼ休みになるし、運転免許も取得してよいことになっていた。
隆史は美香の質問に頷いた。
「じゃあさぁ、もう坊ちゃんじゃなくて、“若旦那”って呼んでいいんじゃないかな?」
美香の提案に、みんな一度静まった。
「もう名実ともに、この夢湯治の主ってくらいなんだけど、まだ20は超えてないからね。
だから、若旦那。
どう?」
美香はみんなの反応を見た。
みんなは大きな拍手とともに、「さんせーい!」と大きな声で言った。
「じゃあ決まり。
よろしくね。若旦那」
みんなからの賛同もあり、来年からは若旦那として、この夢湯治を引っ張っていくことになった。
隆史は照れながらも、
「これからもよろしくお願いします」
と、みんなに頭を下げた。
場は盛り上がり、そろそろお開きにしようかと思っていた矢先、後方で大きな物音がした。
テーブル上の物が床に落ち、グラスが割れ、椅子が倒れ込む音。
振り返ると、そこに源治が倒れていた。
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