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町が活気づき、夢湯治の忙しさはそのままに、時間だけが流れていった。
春が過ぎ、そろそろ梅雨の時期に入ろうとしていた。
この時期は、1年の中でも客足が滞る時期であり、従業員たちにも少しずつだが、休みを宛がうことのできる時期だった。
そして源治が余命を宣告された6カ月が訪れようとしていた。
誰も口には出さなかったが、心の中では全員が源治を想っていた。
しかし当の源治は全く気にすることなく、いつものように夢湯治の仕事を淡々としていた。
「源治さん、体調は大丈夫?
本当に何ともないんですか?」
隆史が我慢しきれずに、尋ねた。
「大丈夫ですよ、若旦那。
むしろ、前より体調が良いくらいです。
こうやって毎日みんなの顔を見て、働けて、満足したお客さんの顔を見られているのが、身体にも良いみたいですねぇ」
そう言って、源治は笑って見せた。
隆史は心配そうに源治を見た。
少しだが、痩せた気がした。
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