代償

14/17
前へ
/17ページ
次へ
 照明が煌々と照らされていても、前回と違い、女は激しかった。  セックスをしているあいだ、私はずっと考えていた。  この女の生活に何があったのだろう。  金には困ってなさそうだし、子供も三人いて、何不自由もなく生活していただろうに。  幸福ではなかったのだろうか。  いくつかの不満なんて誰だって多かれ少なかれ持っているのに。  性欲が満たされていないのは想像できるが、そこを一歩踏み出せば多大な代償が伴うのだ。  この女はそれをわかっていない。  わかっていて覚悟を決めているのか?   とてもそんなふうには見えない。だとしたらこの女は馬鹿だ。  性欲の代償がどれほど大きいかわかっていない。  わかったときは手遅れのときだ。  それを知ってしまった私は、すでに手遅れなのだ。  だから私は馬鹿じゃない。  私は馬鹿じゃなくて、この女は馬鹿だ。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加