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というのも、じいさんが昔から女にだらしなかったというのもあり、見ていて恥ずかしいと敬遠していたせいでもある。
今じゃただ呆れているだけだけど。
「真唯子さん、今日は近所の寄り合いがあって出かけにゃならん。
相手に出来なくて悪かったのう。
なるべく早く帰ってくるから、そのときにお茶でも」
と、真唯子の手を握ろうとしたので、ベシッと払った。
「顕人」
「寄り合い、遅刻するぞ」
「うぬぬ」
ふんっとじいさんは鼻息を鳴らして、出ていった。
「悪かったな」
「ううん。なんか可愛らしいおじいさんだったね」
「どこがだよ」
「二人のやりとりおかしかったー」
ケラケラ笑う。
「昔から折り合いが悪くてな。人のやることいちいち口出してくるし、女好きだし。基本、シカトしてて大丈夫だ。ただのスケベじじいだし」
「へえ。なんか意外。顕の家族ってクールな感じの人が多いのかと思った」
「まったく逆だな。男連中はやかましいな」と溜め息を吐いた。
「へえ。そうなんだ」
「あとは兄貴だな……兄貴もなー、あれなんだよな」と、思わず遠い目をしてしまうのは、一抹の不安が過るからで。
「あれって?」
「まあ、会えばわかる」
真唯子はきょとんと不思議そうに見ていた。
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