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「あやめは3年前に亡くなってしまったが、それでも私がいる。私の目の黒いうちは美由紀と涼の面倒は私が見る。美由紀がボロボロになる姿はもう見たくないんだ。君にもわかるだろ?」
「お父さん……」
司が何かを言おうとしているが、正は取り合おうとしない。
「君にお父さんと言われる筋合いは無い。美由紀を守るのが親のつとめだ。娘にせがまれたから仕方なく君と会うことにはしたが、私は結婚を認めるつもりはない。それがわかったら……」
「とーちゃんをいじめるな」
突然、書斎の入り口から声が聞こえてきた。振り返るとそこには真っ赤な目を吊り上げた涼が立っていた。涼がここまで怒りの表情を正に見せたのははじめてのことだった。
「とーちゃんはな、僕にとってたった1人のとーちゃんなんだ。とーちゃんをいじめるおじいちゃんなんて、大嫌いだ」
「涼……」
正がそう漏らして二の句を継げなくなったそのとき、司が涼のもとに歩み寄り、そしてしゃがんでその肩を掴んだ。
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