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「涼君、おじいちゃんに謝りなさい」
司がそうたしなめたとき、涼は困惑の表情を浮かべた。
「なんで?だってママと離れ離れになれっておじいちゃんは言ったんだよ?」
涼はそう問いかけるが、司は首を横に振る。
「おじいちゃんは涼君に酷いことを言ったり、叩いたりしたのか?そうじゃないだろ?だから、謝りなさい」
涼は司の言葉を受けても、頑なに口を真一文字に結んだままだ。
「涼君は、大切な人から大嫌いだって言われたらどんな気持ちになる?」
「だって……」
そう漏らして再び押し黙ってしまった涼の顔を司はしばらく見つめた後、頬を緩めて言葉を続けた。
「別におじいちゃんは、僕のことをいじめたりはしてないぞ。真剣にお話をしているだけだ」
「真剣?」
涼がそう訊き返すと、司は深く頷いた。
「そうだ。お母さんが涼のことを可愛がっているように、おじいちゃんにとってもお母さんは大事な子供なんだ。だから、お母さんが一番幸せになれる方法は何か、2人で真剣に話し合っているんだよ。だから、おじいちゃんは僕をいじめているわけじゃないんだ」
司は涼の目をまっすぐ見つめてそう諭す。しかし、
「だって、だって……」
涼はそう言って言葉を詰まらせ、美由紀のいるリビングへと走り去ってしまった。
「涼君!」
「待て」
正はそう言って、涼の後ろ姿を追いかけようとした司のことを呼び止めた。
「大丈夫だ、美由紀がついている。今はお互い離れていた方が良い」
司は正に軽く頭を下げると、再び席についた。
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