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それから10年の歳月が経ち、凛子は結婚して長年親しんだ家を離れる事なった。
引っ越す為、必要なもの、不要なものを整理をしなければならない。
祖母が手伝いを買って出てくれたので、二人で思い出話を懐かしみながら手を動かす。
あの事件以降、夕方の外出を避けていたので遭遇しなかったべとべとさんの事がふと気になった。
子供心に怯えていたという笑い話のつもりで話題を振ると、彼女は何かを思い出した風に「実はね」と噂の続きを話し出す。
曰く、凛子達の家の前にある緩い坂道は、突き当たりにある本社の神社と、分社の祠を繋ぐ参道だったそうだ。
住宅地に開墾される前は、熱心な氏子達がお百度参りに使う道だったらしい。
山道に現れるというべとべとさんの噂が先に在ったのか、お百度参りをしている幽霊が噂として語られる様になったのか。
どちらが古くから存在したのか分からないと祖母は呟いた。
土地を離れた凛子は真実を確かめる術を持たないが、今も実家に帰郷した際に父からべとべとさんの話題が稀に出るので、まだ其処に存在する事だけは確かのようだ。
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